体験談6

タクシーの運転手さんのお話です。

 母が入院することになり、ケアマネージャーさんと面談するために介護施設に行かなくてはなりませんでした。

 しかし、介護施設は駅から遠く離れた場所でバスで30分かかると言われました。

 面談の後に母のいる病院へ行かなくてはならず、結構な荷物を抱えていくのでバスでの移動は厳しいので

 タクシーに乗っていくことにしました。

 最寄りの駅からタクシーに乗ると、強面な感じのおじさんでちょっと怖いなと思いながら行き先の施設の名前を告げました。

 走りだしたものの、その施設が分からなかったようでカーナビ検索をし始めました。

 しばらくして路肩に車を止め、再度検索・・・どうやら施設名が出てこない様子。

 おじさんに「ほんとにこの名前であってる?」と言われたのですが

 間違いがなかったので、資料ごとおじさんに渡し確認してもらいました。

 しかめっ面でしばらくそれを眺めて、何かぶつぶつ言いながら再び走りだしました。

 しかし走れど走れど、目的地に着きません。

 約束の時間も迫っていたので不安でしたが、はやる気持ちを抑えておじさんに任せることに。

 走り出して10分位したところ、また車を止めて「この辺なんだけどなぁ」とぶつぶつ。

 地図帳ひっぱりだしたりカーナビをまた見たりあれこれしていると、突然料金メーターを止めました。

 私が驚いていると「本当ならもう着いてなくちゃいけないのに、俺が知らないせいで時間がかかってるんだわ。

 このまま探し続けたらすんごいお金になっちゃうからここで止めるわ」

 と、おじさんが言いました。

 そしてタクシー会社に無線で施設名を言って調べてもらうように手配してくれて、メーターを止めたまま待っている間も探し続けてくれました。

 おじさんとの会話も少しずつ増えて、介護施設に行く理由や母の病状などの話をしました。

 おじさんにも高齢のお母さんがいて、自宅介護で寝たきりということでした。

 打ち解け始めたころタクシー会社から連絡がきて場所が分かりました。

 どうやら資料に書かれている住所は昔の住所で、しかも旧表示になっていて今のカーナビでは登録がなかったようです。

 しかも、施設の名前が印字ミスで1文字かけていたとのことでした。

 ようやく目的地に着いた時「料金メーターは止めたままにしておいたから、この値段でいいよ」と

 40分以上(距離は不明)は走り回っていたのに1000円ちょっとで済みました。

 本当にいいのかな?とまごまごしていると、おじさんが言いました。

 「お母さんのことで色々かかるだろ?これでいいからさっさと行ってこい」

 私はお礼を言って料金を払い、タクシーを降りました。

 ガソリン代とかおじさんの自腹になってしまうだろうに・・・などと考えてたらじーんときてしまいました。

 最初は怖かったけど、とても優しい転手さんに出会えて本当に良かったと思いました。